「小笠原レース2023」のレース公示が掲載されました。
大会webサイト→こちらから。
「小笠原レース」は、春の大型連休中のビッグイベントとして2017年、2019年と沖縄レースを間に挟んで隔年開催されてきましたが、2021年はCOVID-19のパンデミックで中止になっていました。
それが今年(2023年)、主催者がJSAF外洋三崎から、日本セーリング連盟(JSAF)と日本オーシャンセーラー協会(JOSA)の共同主催となっての再開となりました。
さてその概要は。
■三崎スタート
スタートは2023年4月23日。
神奈川県三崎をスタートし南へ、約500マイル。小笠原諸島を目指します。
「小笠原レース」というと、これまでは小笠原をスタートし北上するコースでしたが、今回は外洋ヨットのメッカともいえる三浦三崎をスタートし、小笠原(父島二見港)にフィニッシュ……ということは、これまでの逆。
日程も、4月23日(日)にスタートし小笠原での表彰式が4月28日(金)ということで、レース自体はゴールデンウイーク前にスケジュールされています。
これはいったいどういう意味があるのか?
まず、小笠原には空港が無く、島への行き来は船便のみ。
それも、旅客定員892人の〈おがさわら丸〉1隻が行ったり来たりするだけなので、観光シーズンにはたいそう混み合います。
運航スケジュールは→こちら
この中で、レース運営スタッフの行き帰り、レースメンバーの小笠原行きに回航メンバーの帰りの便。と、まとまった数のチケットを確保するのがそれはもう大変で。
このあたりが、小笠原レース継続の1つのネックにもなっていました。
それが今回の日程とコースなら、連休初期に島から東京へ戻る便はガラガラでしょうから主催者も参加艇もそして船会社や地元観光業界も、すべて丸くおさまるということなのです。
■目指すは、小笠原
オーストラリアの年末恒例といえば「シドニー・ホーバートレース」。大きな海難事故を乗り越えて、変わらずその人気を継続しているのは……1つはタスマニア島フィニッシュだから、ではありますまいか。
大都会シドニーを後にした参加艇は、嵐を乗り越え最果ての田舎町ホバートにフィニッシュ。フィニッシュ後は島のバーで飲み歩き、艇に戻ればそこでも人が集まってワイワイしてたり。でもってそこに後続艇がフィニッシュしてきたり。
これなんです。
これが、ホームポートにフィニッシュしたのではこうはいきません。艇を片付けて家に帰って風呂に入って、と、レースの余韻は長く続かないのです。
我が国ではこれまで、沖縄も小笠原も、そうパールレースも、回航先の観光地からスタートしてホームポート(近く)に戻ってくるレースなわけで。
想像してみてください。フィニッシュした小笠原で祝杯を挙げることを。ライバル艇のフィニッシュを迎えるときを。ライバル艇が待っている小笠原の港に艇を進め舫をとることを。
■回航も楽しむべし
レース後の回航はゴールデンウイークを使ってノンビリ航海が楽しめます。
コースが逆だと、つまりスタート日が決まっていてそれまでに必ず到着していなければならない“行きの回航”の場合、回航メンバーにとってケツカッチンのプレッシャーに加えどこか壊したりしたら大変、と、気を使うったらありゃしない。
これが小笠原フィニッシュなら回航はレースが終わった後ですから、ゆっくりと安全第一のマイペースで帰ってこられるはず。
大島、新島、式根に神津、そして八丈と続く伊豆七島。さらには鳥島にソウフ岩ありと、小笠原へ至る珠玉の島々が連なる海の回廊をこの回航で存分にお楽しみください。レース中ではまた味わえないような航海になるはずです。
どうですか、新装開店といってもいい今年の「小笠原レース」。
日本で外洋ヨットに乗っているなら、参加しない手はないんじゃないでしょうか。
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当初はマルチハル艇で沖縄から小笠原を目指すコースの実施概要も出ていましたが、そちらは中止になりました。
(次回更新は1月28日)
著者:高槻和宏
昭和30年(1955)生まれ。横須賀在住のマリンジャーナリスト。ヨット関連の著書多数。
※「その道は大海原へ」は、JOSAが目指すテーマです。